ゴルフの「救済(リリーフ)」とは、ゴルフ規則にもとづいて、球を元の場所からではなく別の場所からプレーできるようにする処置のことです。救済には、罰打なしで受けられる「無罰の救済」と、1打以上の罰を加えて受ける「罰ありの救済」があります。この記事では、現行のゴルフ規則(2023年版)にそって、救済を受けられる場面と、基点・救済エリア・ドロップの手順を整理します。
救済の基本:「無罰」と「罰あり」の2種類
救済は、大きく次の2つに分けられます。
- 無罰の救済:カート道やスプリンクラーヘッド、修理地、水たまりなど、コースの一部として扱われない状態が球やスタンスの邪魔になるときに受ける救済です。
- 罰ありの救済:球がペナルティーエリアに入った、アンプレヤブルにした、球が見つからない・OBになった、といった場合に、1罰打などを加えて受ける救済です。
無罰の救済も罰ありの救済も、受けるかどうかは原則としてプレーヤーが選べます。ただし、後で説明する「目的外グリーン」のように、救済を受けなければならない場合もあります。
無罰で救済を受けられる主な場面
異常なコース状態(規則16.1)
ゴルフ規則では、次の4つをまとめて「異常なコース状態」と呼びます。
- 動物の穴:動物が掘った穴(ミミズや昆虫など、ルースインペディメントとして扱われる動物の穴は除く)
- 修理地:委員会が杭や線で修理地と定めた区域。杭を抜いた穴や、後で片付けるために積まれた刈草なども、表示がなくても修理地に含まれます。詳しくは修理地からの救済も参考にしてください。
- 動かせない障害物:舗装されたカート道、スプリンクラーヘッド、排水口のふた、ベンチの土台など、簡単には動かせない人工物
- 一時的な水:雨や散水でできた水たまりなど。スタンスをとる前か後に水が見えている必要があり、地面がぬかるんでいるだけでは該当しません。
救済が認められるのは、球がこれらの状態に触れているか中にある場合、または状態が意図するスタンスやスイングの区域を物理的に妨げる場合です。パッティンググリーン上では、プレーの線上にある場合も含まれます。単に視界に入って気になるだけでは救済はありません。
次のような場合には、異常なコース状態からの救済は受けられません。
- 球がペナルティーエリアにある場合
- その状態がなくても、たとえば茂みの中で球を打てないなど、プレーすることが明らかに不合理な場合
カート道からの救済の具体的な流れは、カート道からの救済処置で詳しく解説しています。
地面にくい込んでいる球(規則16.3)
ジェネラルエリアで、直前のストロークでできた自分のピッチマークに球がくい込み、球の一部が地表面より下にある場合は、無罰で救済を受けられます。基点はくい込んだ箇所のすぐ後ろで、そこから1クラブレングス以内、ホールに近づかないジェネラルエリアにドロップします。
ただし、フェアウェイの長さ以下に刈られていない区域の砂の中にくい込んだ場合は、救済の対象外です。また、委員会がローカルルールで、救済をフェアウェイの長さ以下に刈られた区域に限定している場合もあります。
目的外グリーン(規則13.1f)
いまプレーしているホール以外のグリーン(目的外グリーン)に球が触れている場合や、目的外グリーンがスタンスやスイングの区域を妨げる場合は、そのままプレーしてはいけません。無罰で救済を受ける必要があります。完全な救済のニヤレストポイントを基点とし、1クラブレングス以内にドロップします。
危険な動物の状態(規則16.2)
毒ヘビやハチの巣など、球の近くにいる動物によってプレーヤーが重傷を負うおそれがある場合も、無罰の救済が認められます。この救済は、ペナルティーエリア内でも受けられます。
罰ありの救済
ペナルティーエリア(規則17)
ペナルティーエリアにある球は、罰なしにそのままプレーすることもできます。打てないときは、1罰打で次の救済を選べます。
| 救済方法 | 黄色のペナルティーエリア | 赤色のペナルティーエリア |
|---|---|---|
| ストロークと距離(直前に打った場所から打ち直す) | 可 | 可 |
| 後方線上の救済(ホールと、球が最後に縁を横切った地点を結んだ線の後方にドロップ) | 可 | 可 |
| ラテラル救済(縁を最後に横切った地点から2クラブレングス以内) | 不可 | 可 |
どの方法でも、ドロップした球が同じペナルティーエリア内に止まってはいけません。ペナルティーエリアについては複数の救済オプションも参考にしてください。
アンプレヤブル(規則19)
ペナルティーエリア以外であれば、プレーヤーは自分の判断で球をアンプレヤブルにできます。1罰打で、ストロークと距離、後方線上の救済、ラテラル救済(元の球の箇所から2クラブレングス以内)のいずれかを選びます。バンカー内の球では、後方線上・ラテラルの救済はバンカー内にドロップしなければなりませんが、2罰打でバンカーの外の後方線上にドロップする選択肢もあります。詳しくはアンプレヤブルの処置をご覧ください。
紛失球・OB(規則18)とローカルルールひな型E-5
捜し始めてから3分以内に球が見つからない場合や、球がOBになった場合は、1罰打を加えて直前に打った場所から打ち直します(ストロークと距離)。OBや紛失のおそれがあるときは、時間を節約するために暫定球を打っておくことができます。
なお、委員会がローカルルールひな型E-5を採用している場合は、打ち直しの代わりに、2罰打で球がなくなった付近やフェアウェイの間の救済エリアにドロップすることができます。これはカジュアルなラウンドや仲間内のコンペ向けのもので、高い技量のプレーヤーの競技には適さないとされています。また、ペナルティーエリアに入ったことが分かっている(または事実上確実な)球や、暫定球をプレーしていた場合(暫定球も見つからないときを除く)には使えません。採用の有無はコースや競技ごとに確認が必要です。
救済の手順:基点・救済エリア・ドロップ
1. 基点を決める
無罰の救済の多くでは、「完全な救済のニヤレストポイント」が基点になります。これは、元の球の箇所に最も近く、ホールに近づかず、同じコースエリアにあり、その状態による障害(球のライ、スタンス、スイング)がまったくなくなる地点です。ティーマーカーなどで印をつけておくと、後の手順が分かりやすくなります。
2. 救済エリアを測る
救済エリアの大きさは、無罰の救済では基点から1クラブレングス、ペナルティーエリアのラテラル救済とアンプレヤブルのラテラル救済では2クラブレングスです。クラブレングスとは、そのラウンドで持っているクラブのうちパターを除いて最も長いクラブの長さのことです。救済エリアは基点よりホールに近づいてはならず、決められたコースエリアの中でなければなりません。
3. 膝の高さからドロップする(規則14.3)
ドロップはプレーヤー本人が行い、球を膝の高さから真下に落とします。投げたり回転をかけたりしてはいけません。球は救済エリアの中(後方線上の救済では線上)に落とし、地面に落ちる前に自分の体や用具に触れてはいけません。
4. 球が救済エリアの外に出たとき
ドロップした球が救済エリアの中に止まれば救済は完了です。外に止まった場合は、もう一度ドロップします。2回目も外に止まった場合は、2回目のドロップで球が最初に地面に触れた箇所に球をプレースします。救済エリアの外に止まった球をそのまま打つと、誤所からのプレーとして2罰打(一般の罰)になります。
プリファードライ(6インチプレースなど)はローカルルール
「フェアウェイでは球を拾って6インチ以内にプレースしてよい」といった扱いは、ゴルフ規則本体の救済ではありません。悪天候などでコースの状態が悪いときに、委員会がローカルルール(ひな型E-3 プリファードライ)として定めるものです。適用される区域やプレースできる範囲は、そのコースや競技のローカルルールで決まるため、スタート前に確認しておきましょう。
救済でよくある誤解
- 「救済の範囲は約90センチ」:1クラブレングスは決まった長さではなく、パターを除く最も長いクラブで測ります。
- 「打ちやすい場所を基点にしてよい」:基点は規則にしたがって決まる地点で、好きな場所を選べるわけではありません。選べるのは救済エリア内のどこにドロップするかです。
- 「ペナルティーエリア内でもカート道から無罰の救済が受けられる」:ペナルティーエリア内の球には、異常なコース状態からの救済はありません。
- 「ルースインペディメントは救済を受けて動かす」:落ち葉や小石などのルースインペディメントは、救済を受けるのではなく、罰なしに取り除くことができます。ただし取り除くときに球を動かすと、原則として1罰打です。詳しくはルースインペディメントのルールをご覧ください。
ルールの説明は、日本ゴルフ協会(JGA)が発行するゴルフ規則(2023年版)にもとづいています。参考:R&A ゴルフ規則 日本語版「定義」、規則13(目的外グリーン)、規則14(ドロップ)、規則15(ルースインペディメント)、規則16(異常なコース状態など)、規則17(ペナルティーエリア)、規則18(紛失球・OB)、規則19(アンプレヤブル)、JGA「ゴルフ規則のオフィシャルガイド」(ローカルルールひな型E-3・E-5)
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よくある質問
救済を受けると何打の罰がつきますか?
カート道や修理地、一時的な水などの異常なコース状態、地面にくい込んだ球、目的外グリーンからの救済は罰なしです。ペナルティーエリアからの救済、アンプレヤブル、紛失球・OBのストロークと距離は1罰打です。バンカー内の球をアンプレヤブルにしてバンカーの外の後方線上にドロップする場合や、ローカルルールひな型E-5を使う場合は2罰打です。
1クラブレングスはどのクラブで測りますか?
そのラウンドで持っているクラブのうち、パターを除いて最も長いクラブの長さで測ります。多くの場合はドライバーになりますが、長さはプレーヤーごとに異なります。
ドロップした球が救済エリアの外に転がったらどうしますか?
もう一度ドロップします。2回目も救済エリアの外に止まった場合は、2回目のドロップで球が最初に地面に触れた箇所に球をプレースします(規則14.3c)。外に止まった球をそのまま打つと、誤所からのプレーとして2罰打になります。
ペナルティーエリアの中にあるカート道から無罰の救済は受けられますか?
受けられません。ペナルティーエリア内の球には、異常なコース状態からの救済はありません。そのまま打つか、1罰打でペナルティーエリアの救済を受けます。
