ゴルフで「ジガー(jigger)」と呼ばれるのは、グリーン周りで球を低く転がして寄せるためのクラブです。もともとはヒッコリーシャフトの時代に使われていたロフトの少ないアイアンの名前で、現在ではチッパーに近い寄せ専用クラブを指して使われることがあります。カクテルを量る計量カップも英語で jigger といいますが、ゴルフ用語としてのジガーとは関係ありません。また、グリーンの外周の短く刈られた芝は「カラー」や「フリンジ」と呼ばれ、ジガーではありません。この記事では、ゴルフクラブとしてのジガーの意味と、チッパーやウェッジとの違い、使う場面、ルール上の注意点をまとめます。
ジガーとはどんなクラブか
歴史的なジガー
現在のように番手で呼ぶ前のゴルフクラブには、「クリーク」「マッシー」「ニブリック」などの名前がついていました。ジガーもその一つで、ロフトが少なく、シャフトが短めのアイアンとされています。資料によって想定するロフトには幅がありますが、フルショット用というより、グリーン周りから低く転がすアプローチに重宝されたクラブとして知られています。
こうした使われ方から、ジガーは現在のチッパーの原型の一つと説明されることもあります。
現在の「ジガー」
20世紀後半以降、ジガーの考え方を受け継いだ、短いシャフトでパターのように打てる寄せ用クラブが何度か登場しています。現在はこうしたクラブの多くが「チッパー」として売られており、製品によっては「ジガー」の名前が使われることもあります。ロフトや長さは製品ごとに異なるので、選ぶときは仕様を確認しましょう。
チッパー・ウェッジとの違い
グリーン周りで使うクラブには、ジガーのほかにチッパーやウェッジがあります。違いをおおまかにまとめると次のとおりです。
| クラブ | 主な特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ジガー | ロフトが少なめで、シャフトが短め。低く出して長く転がす | グリーンまで障害物がなく、転がせる距離が長いとき |
| チッパー | アプローチ専用のアイアン。ソールが広く、パターに近い感覚で打てるものが多い | ダフりが心配なときや、グリーン近くから転がして寄せたいとき |
| ウェッジ | ロフトが大きく、球を上げたりスピンで止めたりしやすい | バンカー越えなど、球を上げる必要があるとき |
ジガーとチッパーは、どちらも「転がして寄せる」ためのクラブで、はっきりした線引きがあるわけではありません。一般に、ジガーと呼ばれるものはチッパーよりもロフトが少なく、より転がりを多くする設計になっていることが多いといえます。チッパーについてはチッパー活用術も参考にしてください。
ジガーを使う場面
バンプ・アンド・ランやランニングアプローチ
ジガーが役立つのは、グリーンの手前に花道があり、球を低く出して転がせるときです。球を上げるアプローチに比べてスイングが小さくて済み、ミスをしても距離のずれが小さくなりやすいのが利点です。花道やカラーを使って、グリーンの手前からワンクッション入れて転がす「バンプ・アンド・ラン」にも向いています。
向かない場面
一方で、グリーンとの間にバンカーや池がある場合、深いラフから打つ場合、ピンまでの距離が短く止める必要がある場合には、ジガーは向きません。そうした場面ではウェッジを使うほうが安全です。
打ち方の基本
- パターに近いストローク:手首をあまり使わず、肩の動きで振り子のように打ちます。
- 球は右足寄り:球をやや右に置き、ハンドファーストに構えると、低く出しやすくなります。
- 落とし所を決める:グリーンのどこに落として、どれくらい転がすかをイメージしてから打ちます。
- グリップはクラブに合わせる:短く握るとコントロールしやすくなります。パター用の握り方では球が弱くなり、ショートしやすいという指摘もあるので、練習で確かめましょう。
パターで転がす場合との違い
グリーンのすぐ外でライが良ければ、パターで転がすという選択肢もあります。パターはロフトがほとんどないため、芝の抵抗を受けやすく、カラーやフェアウェイの芝が長い場所では転がりが読みにくくなります。ジガーはロフトがあるぶん、最初に少しだけ球を浮かせて芝の上を越え、そこから転がすことができます。グリーンまでの間に少し長い芝がある場面や、パターでは距離が届きにくい場面で、ジガーの使いどころが生まれます。
ジガーが向いている人
ジガーのような転がし用のクラブは、次のような人に向いています。
- アプローチでダフりやトップが出やすい人:小さな振り幅で打てるため、大きなミスが出にくくなります。
- ウェッジで距離感が合わない人:転がす距離が長くなるぶん、パッティングに近い感覚で距離を合わせられます。
- 花道が広いコースでよくプレーする人:転がせる場面が多いほど、使う機会が増えます。
反対に、グリーン周りにバンカーや池が多いコースや、グリーンが速く手前から転がしても止まりにくいコースでは、使える場面が限られることもあります。
選ぶときのポイント
- ロフト:ロフトが少ないほど転がりが長く、多いほど球が上がって止まりやすくなります。自分がよく使う距離と、転がしたい割合で選びます。
- 長さ:パターに近い長さのものは構えやすい一方、振り幅が大きくなると打ちにくいことがあります。実際に構えて確かめましょう。
- ソール幅:ソールが広いものは地面に刺さりにくく、ダフりのミスを和らげてくれます。
- 14本の構成:ジガーを入れる場合、ほかのクラブを1本抜く必要があるかもしれません。どのクラブと役割が重なるかを考えて決めます。
練習のしかた
練習では、グリーン周りにタオルなどの目印を置き、そこに落として転がす練習が効果的です。振り幅を2〜3段階に決めておき、それぞれどのくらい転がるかを確かめておくと、コースで距離を合わせやすくなります。グリーンの速さによって転がりは変わるので、ラウンド前に練習グリーンで転がりを確認しておくのもよい方法です。
ルール上の注意点
ジガーやチッパーを競技で使うときは、クラブが用具規則に適合している必要があります。USGAの用具規則の解釈では、チッパーは主にパッティンググリーン以外で使うために作られたアイアンとされ、アイアンとしての基準が適用されます。主なポイントは次のとおりです。
- 打撃面は1つだけ:両面で打てる「両面チッパー」は不適合で、規則に適合したクラブとは認められません。
- シャフトはヒール側に付く:パターのようなセンターシャフトは認められません。
- グリップの断面は円形:パター用のような平らな面のあるグリップは使えません。
市販のジガーやチッパーの多くは、こうした基準を満たすように作られています。ただし、古いクラブや特殊な形のクラブを使う場合は、メーカーの表示や適合クラブのリストで確認しておくと安心です。また、ジガーを入れる場合も、持ち運べるクラブは14本以内という制限は変わりません。
クラブの適合性に関する説明は、USGA・R&Aの用具規則とその解釈にもとづいています。プレーに関するルールの説明は、日本ゴルフ協会(JGA)が発行するゴルフ規則(2023年版)にもとづいています。参考:USGA 用具規則 Part 2 Rule 1 の解釈(チッパー)、GOLF.com:チッパーの適合性(両面チッパーは不適合)、Wikipedia: Obsolete golf clubs(ジガー)、Colorado AvidGolfer:ジガーとチッパーの歴史
よくある質問
ジガーとチッパーは同じものですか?
はっきりした区別はありません。どちらも転がして寄せるためのクラブで、ジガーはもともとヒッコリー時代のロフトの少ないアイアンの名前でした。現在は、こうした寄せ用クラブの多くがチッパーとして売られています。
ジガーやチッパーは競技で使えますか?
用具規則に適合したものであれば使えます。チッパーはアイアンとして扱われ、打撃面が1つ、シャフトがヒール側に付く、グリップの断面が円形といった基準を満たす必要があります。両面で打てるチッパーは不適合です。
ジガーはどんな場面で使いますか?
グリーンまでの間に障害物がなく、花道やカラーを使って低く転がせる場面に向いています。バンカー越えや、球を上げて止めたい場面ではウェッジのほうが適しています。
