アーメンコーナー:試練と栄光の11番~13番ホール
ゴルフ初心者
先生、『アーメンコーナー』ってゴルフでよく聞きますけど、どういう意味ですか?
ゴルフ博士
いい質問だね。マスターズが開催されるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの11番、12番、そして13番ホールのことを指すんだよ。これらのホールは、とても難しくて、多くの選手がここでスコアを崩してしまうんだ。
ゴルフ初心者
なるほど、11番から13番までなんですね。なぜ『アーメンコーナー』と呼ばれるんですか?
ゴルフ博士
スポーツライターのハーバート・ウォーレン・ウィンドがこの3ホールを『アーメンコーナー』と名付けたんだ。1958年のマスターズで、アーノルド・パーマーが競技委員と規則の解釈でもめた場所がこのあたりだったんだよ。その様子を見て、ウィンドはジャズの名曲『シャウティング・アット・ザ・デビル』の一節『アーメンコーナー』を連想して、そう名付けたと言われているんだよ。
Aとは。
ゴルフ用語の『アーメンコーナー』について説明します。
名前の由来
「祈りの場所」とも呼ばれる「アーメンコーナー」とは、ゴルフ競技の最高峰、マスターズ・トーナメントが開催されるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの11番ホール、12番ホール、そして13番ホールの連続した3つのホールのことを指します。この3つのホールは、その美しい景観とは裏腹に、非常に難易度が高く、数々の名選手たちを苦しめてきました。
この「アーメンコーナー」という名前は、1958年のマスターズ・トーナメントを取材した、アメリカの有名なスポーツ雑誌「スポーツ・イラストレイテッド」の記者、ハーバート・ウォーレン・ウィンド氏によって名付けられました。ウィンド氏は、この3つのホールでプレーする選手たちが、まるで神に祈りを捧げているかのように見えたことから、ある曲を連想しました。それは、当時よく知られていたジャズの曲、「シャウティング・ホザナ」です。この曲には、「アーメン、アーメン」という歌詞が繰り返し歌われており、ウィンド氏はこの曲のイメージと、難関に挑む選手たちの姿を重ね合わせ、「アーメンコーナー」と名付けたと言われています。
特に12番ホールは、短いパー3でありながら、グリーンを囲む池やクリーク、そしてバンカーなどの罠が巧みに配置されている難ホールとして有名です。わずかな風を読み間違えたり、ショットの精度が少しでも狂ったりすると、たちまち池に捕まってしまいます。毎年、この12番ホールで多くの選手がスコアを崩し、優勝争いから脱落していく様子は、まさに「祈りの場所」の名にふさわしいと言えるでしょう。
マスターズ・トーナメントの歴史において、このアーメンコーナーは幾度となくドラマを生み出してきました。優勝を目前にした選手がここで痛恨のミスを犯し、栄光を逃してしまうこともあれば、逆にここで劇的なプレーを見せて、一気に優勝へ駆け上がっていく選手もいます。まさに、天国と地獄が隣り合わせの場所であり、選手たちの技術と精神力が試される、トーナメントの最大の難所と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | アーメンコーナー(祈りの場所) |
場所 | オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ
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由来 | 1958年のマスターズ・トーナメントを取材したハーバート・ウォーレン・ウィンド氏(スポーツ・イラストレイテッド誌)が命名。
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特徴 | 美しい景観と裏腹に難易度が高い。
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役割 | トーナメントの勝敗を左右する重要な場所。
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11番ホール攻略
11番ホールは4打で上がる長いホールで、最初の打球が鍵を握ります。正確な打ち出しが求められる、戦略性の高いホールと言えるでしょう。
まず、ティーインググラウンドに立つと、左側に池が目に飛び込んできます。大きく曲げると池ポチャの危険性があるため、左サイドは避けなければなりません。かといって、右サイドも安心はできません。右側は背の高い木々が壁のように立ちはだかっており、打ち込んでしまうと出すだけで一苦労です。ボールをスムーズに運ぶためには、両サイドの危険を避け、フェアウェイ中央を狙うことが重要になります。
ティーショットをうまくフェアウェイに運ぶことができれば、次のショットが見えてきます。しかし、2打目を打つ地点に立つと、グリーンの手前に小川が流れているのがわかります。この小川は、グリーンへの正確な距離感を試す、いわば最後の関門です。グリーンを狙うには、小川の存在を計算に入れ、距離をしっかり見極めたショットが必要です。ショートして小川に捕まるリスクと、グリーンを大きくオーバーしてしまうリスクを天秤にかけ、最適なクラブを選択しなければなりません。
そして最後に、グリーン上での勝負です。このホールのグリーンは、複雑な起伏と傾斜が特徴です。単純な上りや下りではなく、様々な方向への傾斜が組み合わさっているため、ボールの転がりを正確に読むことが非常に重要になります。微妙な傾斜を読み間違えると、思わぬ方向にボールが転がり、3パット、4パットの危険性も高まります。
11番ホールは、攻めたい気持ちと、守らなければいけない状況を見極める判断力が試されるホールです。攻めと守りのバランスを保ちながら、4打で確実にカップインすることを目指しましょう。
ホール | 11番ホール (Par 4) |
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特徴 | 長距離、戦略性が高い |
ティーショット |
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セカンドショット |
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グリーン |
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全体戦略 | 攻めと守りのバランス |
12番ホール攻略
12番ホールは、パー3の短いホールであり、名門競技場の中でも特に印象深いホールの一つです。レイバン小川の上にまるで浮かんでいるかのように配置された緑の芝は、美しくも恐ろしい罠を潜めています。手前と奥には砂の窪みが巧みに配置され、プレイヤーの正確性を試します。
このホールを攻略するには、まず風の読みが重要です。小川を渡る風は、時に優しく、時に激しく舞い上がり、小さな白い球の軌道を大きく変えてしまいます。風速だけでなく、風の向き、そして風の変化を読む洞察力が求められます。風の影響を最小限に抑えるには、低い弾道の球を打つなどの技術も必要となるでしょう。
正確な距離感も不可欠です。風の影響を計算に入れ、正確にグリーンを狙わなければ、砂の窪み、あるいは奥の茂みへと吸い込まれてしまいます。距離感を掴むためには、事前の練習や経験がものを言います。何度もこのホールに挑戦し、風の影響やグリーンの傾斜を体に覚え込ませることで、初めて真の攻略が見えてくるのです。
緑の芝は平坦ではなく、複雑な傾斜を帯びています。旗の位置によっては、傾斜に沿って球が大きく転がり、思わぬ方向へ流れてしまうこともあります。そのため、旗の位置をしっかりと確認し、傾斜を計算に入れた上で、狙う場所を定める必要があります。中央を狙うのが安全策ではありますが、旗の位置によっては、あえて難しい位置を狙う勇気も必要となるでしょう。
12番ホールは、まさに技術と精神力の両方を試される難関です。風の読み、距離感、そして傾斜を読む力。これらの要素を緻密に計算し、正確なショットを放つことが、このホールを攻略する鍵となります。
ホール | 12番ホール (パー3, 短い) |
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特徴 | レイバン小川の上に浮かぶグリーン、手前と奥にバンカー |
攻略ポイント |
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必要能力 | 技術、精神力、風の読み、距離感、傾斜を読む力、正確なショット |
13番ホール攻略
13番ホールは距離こそ短いパー5のロングホールですが、戦略性が高く、正確な一打一打が求められるため、スコアメイクのカギを握るホールと言えます。ティーショットは左に曲がるコース形状のため、フェアウェイ中央やや右寄りを狙うのが理想です。左の林に打ち込むとトラブルになりやすく、距離を稼ぐことが難しくなります。また、右側は比較的安全に見えますが、ラフが深く、傾斜もきついため、次のショットに影響が出やすいので注意が必要です。
セカンドショット地点からはグリーンが見えにくく、グリーン手前にはクリークが流れています。このクリークは見た目以上に幅が広いため、残りの距離とライに応じて、安全にレイアップするか、思い切ってグリーンを狙うかの判断が重要です。グリーンを狙う場合は、クリークまでの距離を正確に把握し、風の影響も考慮したクラブ選択が必要です。グリーン奥は木々が迫っているため、ショートアイアンで確実に手前に落とす方が良い場合もあります。パー5でイーグルを狙いたい気持ちは分かりますが、無理な攻めは禁物です。状況に応じてリスクとリターンを冷静に判断し、最適な戦略を立てることが大切です。
グリーンはアンジュレーションが強く、見た目以上に速いため、パットの難易度が高いです。グリーンの傾斜を読み切るだけでなく、風の影響も計算に入れなければ、3パット、4パットも珍しくありません。ピンポジションも考慮に入れ、慎重にラインを読み、タッチを合わせていきましょう。13番ホールは、攻めと守りのバランスが求められる、まさに戦略性の高いホールと言えるでしょう。
ショット | ポイント | 注意点 | 推奨戦略 |
---|---|---|---|
ティーショット | 左ドッグレッグ、距離は短い | 左の林はトラブル、右のラフは深い | フェアウェイ中央やや右狙い |
セカンドショット | グリーン手前にクリーク、グリーン奥に木々 | クリークは見た目より広い、グリーン奥は危険 | レイアップorグリーン狙い(距離、ライ、風を考慮) |
サードショット | グリーンはアンジュレーションが強く速い | 傾斜、風を読む | ピンポジション、傾斜、風を考慮したパット |
歴史に残る名場面
幾多の名勝負を生み出してきた場所、米国ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ、その11番、12番、13番ホールは『アーメンコーナー』と呼ばれています。毎年4月に開催されるマスターズ・トーナメントにおいて、この難関は数々のドラマを生み出し、ゴルフ史に深くその名を刻んできました。
1986年の大会を思い返すと、誰もが忘れられないでしょう。当時46歳、『黄金熊』の異名を持つジャック・ニクラウス。ベテランの域に達し、往年の輝きを失いつつあった彼が、突如若き日を彷彿とさせる力強いプレーを見せつけました。最終日、アーメンコーナーでバーディーを奪うなど、驚異的な追い上げを見せ、見事メジャー最年長優勝記録を塗り替え、6度目のグリーンジャケットに袖を通しました。まさに奇跡の復活劇であり、ゴルフの神髄を見せつけた名場面と言えるでしょう。
1992年の大会も、記憶に残る戦いでした。フレッド・カプルスは、12番ホール、通称『ゴールデンベル』で池に3度もボールを打ち込むという不運に見舞われました。しかし、不屈の闘志でその後も崩れることなく、最終的に優勝争いに加わる健闘を見せました。結果は惜しくも2位に終わりましたが、彼の粘り強さは多くの人の心を打ち、アーメンコーナーの過酷さを物語っています。
そして、2012年の大会では、バッバ・ワトソンが信じられないリカバリーショットを披露しました。10番ホールの林の中から、大きく曲がる魔法のようなショットを放ち、そのままイーグルを奪取。この劇的なプレーが、彼の逆転優勝への大きな弾みとなりました。まさに、アーメンコーナーの女神が微笑んだ瞬間と言えるでしょう。
このように、アーメンコーナーは、ゴルファーたちの技術と精神力を極限まで試す特別な場所です。自然の美しさと難しさ、そしてそこで生まれる数々のドラマが、この場所をゴルフの聖地として輝かせていると言えるでしょう。
大会 | ゴルファー | 出来事 | 結果 |
---|---|---|---|
1986年 | ジャック・ニクラウス | アーメンコーナーでバーディーを奪うなど、驚異的な追い上げ | メジャー最年長優勝(6度目のグリーンジャケット) |
1992年 | フレッド・カプルス | 12番ホール(ゴールデンベル)で池に3度ボールを打ち込むも、その後も崩れることなく健闘 | 2位 |
2012年 | バッバ・ワトソン | 10番ホールの林の中からリカバリーショットでイーグルを奪取 | 逆転優勝 |
まとめ
『名人の墓場』とも呼ばれるアーメンコーナーは、マスターズ・トーナメントの最終局面、11番、12番、13番ホールからなる難関です。春の華やかさとは裏腹に、選手たちにとっては試練の場となります。
まず11番ホールは、池に向かって打ち下ろす長い4番ホールです。左サイドには池が迫り、グリーン手前にも池が待ち構えています。正確なティーショットと、距離感を問われるセカンドショットが求められます。風を読み間違えれば、たちまち池に捕まってしまうでしょう。パーを取ることができれば、ひとまず胸をなでおろせる難ホールです。
続く12番ホールは、アーメンコーナーの中でも最も短いパー3です。しかし、このホールの難しさは距離ではありません。グリーンは奥行きが狭く、手前と左右はバンカーと小川に囲まれています。さらに、このコース特有の風が選手たちを惑わせます。わずかなミスも許されない、まさに技術と精神力の試練です。風の計算を誤れば、あっという間に小川に吸い込まれてしまいます。
そして13番ホールは、アーメンコーナー最後の難関となるパー5です。右へのドッグレッグで、ティーショットの落としどころが重要になります。セカンドショット地点からは、クリークがグリーン手前を流れており、正確なショットが求められます。距離のある2打目を成功させれば、イーグルも狙えるため、攻めのゴルフが求められるホールです。リスクとベネフィットの判断が、このホールの攻略のカギとなります。運と実力が試されるこの3ホールは、まさにゴルフの醍醐味を凝縮した名場面と言えるでしょう。自然の美しさと難しさが織り成すドラマは、観るものを魅了し、感動を与え続けてくれるのです。
ホール | パー | 特徴 | 難易度 |
---|---|---|---|
11番 | 4 | 池に向かって打ち下ろす長いホール。左サイドとグリーン手前に池。正確なティーショットと距離感が問われるセカンドショットが必要。 | 高 |
12番 | 3 | アーメンコーナー最短。グリーン奥行き狭く、手前左右はバンカーと小川。特有の風が難易度を上げる。 | 高 |
13番 | 5 | 右ドッグレッグ。ティーショットの落としどころ重要。グリーン手前にクリーク。正確なショットが必要。イーグル狙える攻めのゴルフも可能。リスクとベネフィットの判断が重要。 | 高 |