不動産ニュース考察:ハウスメーカー倒産の被害(09.05.16)

富士ハウス、アーバンエステートという中堅ハウスメーカーの倒産により、多額の被害を受けた注文主が多く出ており、この被害は耐震偽装事件と匹敵すると思われるが、メディアの注目度、関心度は、あまりにも違いがある。

耐震偽装事件の時を思い出すと、連日のようにメディアで取り上げられ社会問題となり、建築基準法の改正など、消費者保護へと繋がったが、今回はメディアがひっそりとしており、消費者保護への改善は期待できない。

耐震偽装のときとの違いは、視聴率が取れる「姉歯建築士、ヒューザー元社長」のようなキャラがいないこと。メディアが取り上げる基準は、生活や社会への影響にはなく、視聴率が取れるかどうかのみであるという感じを受け、さびしく思う。

このように、メディアが今回の問題を取り上げないなか、やはりというか、ようやく、朝日新聞が、今回の被害状況と根本的な原因などを徹底的に取材し、核心まで踏み込んだ記事を掲載した。

◆2千万円払ったその日に… 注文住宅業者倒産の被害例

注文住宅のために多額の前払い金をつぎ込んだら、いきなり業者が倒産。お金は返らず、住宅は仕上がらず、途方に暮れる――。そんな悲劇が首都圏などで相次いでいる。トラブルを避けるには、安易に営業トークにのらず、業者への支払いに細心の注意をするしかないのが現状のようだ。

新築の家屋が立ち並ぶ東京都清瀬市下宿の一角。その1区画分の更地を前に、「本当に悔しい」と会社員の男性(28)が話した。

4月末には2階建て103平方メートルのマイホームが建っているはずだった。社宅のマンションから出て、家を建てようと考えたのは昨年9月。まもなく2歳になる娘の成長を考えて、富士ハウスに発注。だが、今年1月29日、2千万円を振り込んだその日に同社は破産した。

営業マンが「1%割り引くので全額払った方が得」と何度も食い下がるので、「どうせ払うものだし」と振り込んでしまった。営業マンも「大丈夫」と言っていた。昨秋から資金繰りが苦しくなっていた同社が営業マンに、前払い金を多く払わせるよう指示していたことを後で知った。

「甘かったが、あれだけの大手が簡単に倒産するとはどうしても思えなかった」

倒産当日に振り込んだこともあり、管財人が「道義的な責任がある」として半分の1千万円を返してきたが、残りの1千万円は両親からの借金だ。これとは別に、2400万円の銀行ローンも組んでいる。銀行は「あと1千万円かりて、家を完成させたらどうか」と言うが、いまは5月から始まる月10万円超の返済で頭がいっぱいだ。

栃木県さくら市にも建設途中の家がある。同じ富士ハウスの物件だ。発注した女性(30)は「もう4カ月もこのまま。一体どういう状況なのか、情報がないことが不安にさせる」と話す。

女性は、母親(55)と夫(35)、長男(8)の4人暮らし。ある程度の貯金もできて新居での暮らしを思い描き、08年11月に着工。すぐに建築費の全額2千万円を振り込んだが、工事は今年1月にストップ。屋根は仕上がらず、内装には手が付けられなかった。予定通りに完成させるにはさらに800万~1千万円が必要と言われている。雨ざらしの「自宅」を前に、残るのは「あきらめの気持ちだけ」という。

神奈川県茅ケ崎市にも家が建つはずだった更地がある。請負業者はアーバンエステート。発注した男性(37)は母親(63)と2人暮らし。将来の結婚を考え、それまで住んでいた家を2世帯用に建て替える計画だった。昨夏、営業マンから「早めに前受け金を払えば5%値引きする」と勧められ、設計段階だったが建築費の7割にあたる2千万円を振り込んでしまった。「家を建てるのは初めて。相手に言われればそんなものかと思った。ただ、見積もりを取った4社のうち、3社が倒産した。こんなことは普通の消費者には分からない」と話す。

   ◇

宅地建物取引業法(宅建法)が適用される建売住宅やマンションの場合には、メーカー側が倒産しても前払い金(手付金)を救済する仕組みがあるが、同法の対象外である注文住宅にはこうした仕組みが十分に整っていないためとみられる。顧客側はほとんど救済されないという。注文住宅は約2万5千社の業者が年に約30万戸建築しており、被害の拡大が懸念される。

被害が出ているのは、いずれも破産した富士ハウス(浜松市)やアーバンエステート(埼玉県川口市)の顧客だ。

富士ハウスは、関東や関西、東海で注文住宅の請負を展開。08年3月期の売上高は418億円だったが今年1月末に破産、グループの負債総額は638億円。破産管財人によると、顧客が前払い金を支払い済みなのに着工にも至っていない分が1438件、未完成の分が420件あり、被害総額は55億円に上る見通しだ。大阪や京都などの関西圏でも数百人が、名古屋、三重など東海地方でも数百人が被害にあっている。(小川弘平、座小田英史)

引用元:朝日新聞(2009年5月13日)

今回の問題は、倒産した会社にもあるのだろうが、耐震偽装と同じく、行政側に問題がある。

不動産業者が新築住宅を販売する際、完成までの間、代金の5%または1,000万円を超える金額を受領する場合は、保全措置(保証もしくは保険など)を取らなければならない。完成した場合でも、代金の10%または1,000万円を超える金額になる場合は同じ。さらにどのような場合でも20%を超える金額を受領できない。※契約後引渡しまで、当然、引渡し時には全額受領できます。

これは、完成までに不動産業者が倒産した場合、被害を減らすために行われている。まさに今回のようなケースである。しかし、新築住宅の建築では、このような規定がない。手付金や中間金を完成前にいくらでも受領できるのが建築請負契約。※完成保証制度もあるが任意。

不動産取引業務を行うには、どんな小さな取引でも、宅地建物取引業の免許が必要であるが、建築の場合、500万円以下の取引しか請け負わない場合は免許が要らないなど、不動産業界と比べ、建築業界への取り締まりは甘い。

今回の朝日新聞に続き、各メディアでも大きく取り上げ、建築行政へプレッシャーをかけることを期待したい。しかし、被害者の「CMをバンバン流している会社だから安心した」というコメントに怖がってできないかな。

(余談)

同じく本日の朝日新聞に、母子加算廃止で高校や修学旅行に行けないという悲しい記事と、補正予算の大盤振る舞いという情けない記事が、同じ5面に掲載された。母子加算の費用は200億円、定額給付金の事務費800億円、庁舎の建て直し何千億円。お金の使い道、おかしくないですか?



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