不動産ニュース考察:地価上昇でマンション正念場(05.09.28)

○東京圏地価上昇でマンション正念場 -価格転嫁に厳しい目

地価の上昇がマンション価格に異変を及ぼす様相となってきた。 すでに2年ほど前からマンション用地の落札価格は高騰しており、 06年1月から順次販売物件として登場してくる。

しかし、一般消費者はデフレ意識から脱し切れておらず、 マンション選択眼も厳しくなっている。販売価格への転嫁は 受け入れられるのか。好調を続けてきたマンション市況が正念場を迎える。

【交通の利便性】

首都圏で供給数が6年連続8万戸超と、好調を続けてきた マンション市況は地価の下落によってもたらされた。

かつて工場や倉庫街だった東京湾岸地域には高層マンションが 建ち並び、ファミリータイプでも4000万~5000万円と サラリーマンの手に届く価格で販売されている。

現在は首都圏で販売されるマンションの半分が東京23区内にあり、 「もはや都心回帰ではない。都心一極集中」と表現する。 交通利便性の良さがマンション人気の原動でもあった。

【不良債権処理で】

東京の品川や芝浦エリアは、分譲マンションの“湾岸戦争”と いわれるほどの激戦区になっている。

人気を博しているのが、中央区勝どきでオリックス・リアルエステートや 住友商事が開発する「ザ・トーキョー・タワーズ」。

銀座から2キロメートルという立地で、70平方メートル台の部屋が 3900万円で購入できる。もともと敷地を所有していたミサワホームが 大型開発の絵を描いていたが、資産処分の一環で放出。地価の下落と、 金融機関の不良債権処理、企業の用地放出が相まって都心の割安 マンションを生み出してきた。

【捨てる神あれば、拾う神あり】

そこには2つの理由が考えられる。1つは資産デフレにより企業の 遊休保有地の放出が加速されたこと、もう1つは規制緩和によって高層 建築物の建設が容易になったこと。

一部地域では反転の兆しを見せつつも、全体としてはいまだ地価の下落が 止まらない中、企業にとって収益を生み出さない固定資産を保有し続ける ことは体力的に限界がある。

そのため、社宅や福利厚生施設、倉庫などの「“負”動産」を売却することで、 バランスシート上、身軽になろうと資産リストラを実行していった。

つまり、保有資産の「選択と集中」化と言い替えてもいい。そして、 こうした土地を買い受ける“お得意様”が分譲マンション業者である。

湾岸エリアは住宅地としては条件に恵まれない分、安価で用地取得できる ことが業者にとって最大のメリット。

その際に、再開発を景気回復の足がかりとしたい政府が容積率など、 建築上の規制緩和を積極的に行った結果、高層建築物の建設が容易になり、 湾岸地域を中心に20階を超える高層マンションが多く見られるようになった。

まさに規制緩和が、タワーマンション建設の引き金となった。

○行き過ぎた規制緩和の“功罪”

上段より、固定資産の早期償却を望む企業と、都心エリアで一定面積の用地を 取得したい分譲マンション業者の思惑が合致し、再開発が促進された。

しかし一方で、従来から需要(=マイホーム購入者)の先食いが指摘されている中、 買い手の顔を見ずに、ブーム便乗の一方的なマンション建設を行ってきた側面も 否定できず、その結果、2005年問題という社会問題にまで発展している。

建築物の高層化によって、限られた都心立地の利用性を高めたことはプラスで あったが、再開発のつもりが蓋(ふた)を開けてみたら、“乱”開発となり、 供給過多(マンションの乱立)を招いてしまったのだ。

今後、「神の見えざる手」によって、分譲マンション市場は在庫調整が 本格化していくことになるだろう。

品川エリアのゴールドクレストの「ベイクレストタワー」。05年12月に 完成を迎えるが、販売済みは6割にとどまる。しかし、同社は「完成時に 7~8割が売れていればいい。原価は回収できている」としている。

用地が安かったゆえの余裕でもある。「00~01年がマンション用地価格の 底だと思った」と同時期に大量の用地を買い込んだことが背景にある。

また、今や地価は上昇局面となっており、各社戦略を徐々に変えている。 2~3年後に更地になる予定の社宅や工場を買収し、現状は賃借して 所有している不動産もある。

「昨年秋から今年秋までの1年間で、用地の落札価格は全体に1.5~2割 上昇している」、「路線価対比で300~400%の落札例が出た」と、 マンション会社の用地仕入れ担当者からは声が漏れてくる。

こうした土地が来年1月から販売用マンションとして姿を現す。

【「品質」にばらつきが】

こうした完全な「買い手市場」が形成されたことで、マイホーム検討者に とっては有利な面が増えたことは間違いない。

首都圏では8万戸超、関西圏では3万戸超の新築マンションが毎年供給され、 まさに“よりどりみどり”だった。

インターネットの普及によって、専用サイトに希望条件を入力しておけば Eメールで物件情報が自動的に送られてくるなど、誰もが簡単に新築マンションを 探せるようになったことも、消費者の選択を容易にしている。

しかし、「物件選択の幅が広がった」こと、「希望の物件に巡り合える」ことは 必ずしも比例しない。

価格設定、立地、そしてプランの3拍子がそろって消費者の賛同を得られた マンションは順調に契約数を伸ばしている半面、いわゆる「安かろう悪かろう」物件や、 ターゲットが明確でなく物件のコンセプトが中途半端なマンションは、 得てして販売が苦戦している。

【収納部分まで】

また実質的にはマンション価格はすでに値上がりしている。東京カンテイの 調査によると首都圏では00年以降、1戸当たりの平均価格は3900万円前後 で変わらないものの、3.3平方メートル価格は00年の179万円に対し、 04年は196万円に上昇している。代わりに部屋の平均面積は、ピークの 02年より5平方メートル狭くなり、04年は69.58平方メートルだった。

用地価格の上昇を面積を狭くすることでカバーしているのが実態。 今は収納スペースなど目につきにくい部分を削っているが、今後1割以上 面積を削るのは難しくなってくる。

現在の分譲マンション市場では、買い手側がイニシアチブを握り有利な立場に あるものの、物件数の増加は同時に“マンション品質のばらつき”を伴うことを 忘れないようにしたい。

【ねじれ現象に】

その一方で、戸建ての分譲は価格下落が続いている。

飯田産業が販売する住宅価格はこの1年で3400万円から3200万円に落ちた。 「用地の仕入れ値は上昇しているのに、消費者はデフレ意識から脱していない」(同社)と ねじれ現象が起きている。

「販売価格として受け入れられるまで、もう少し時間が必要」と語る。

サラリーマンの収入をかんがみると住宅価格のボリュームゾーンは4000万円台に とどまり、価格上昇が受け入れられる余地は少ない。「今後は大規模開発などで、 打てる手が少ないときつくなる」(マンション事業者幹部)。

06年3月期は大手不動産やマンション各社の利益率はそれほど落ち込まない見通しだが、 来年度以降から高値で仕入れた土地が利益を圧迫することも想定される。

参入障壁が低いといわれてきたマンション事業だが、今後は再編淘汰(とうた)が 進むことも考えられる。

【一般消費者以外にも新たな買い手が登場】

前段で触れたように現在のマーケットは消費者主導が定着している。そのため、 高品質で低価格なマンションを提供しようと各分譲業者は苦心しているが、 ここ数年、新たな販売先が登場してきた。

1つがREITや海外の投資会社へのマンション1棟売り、もう1つが売れ残り住戸を 専門に再販するリセール会社への売却だ。

ファミリー向け分譲マンションは本来、実需利用のはずだが、収益還元による評価を 基礎にマンションの「利回り」に注目が集まり、投資会社による投資対象となった。

その結果、国内外の「投資マネー」が一部の優良分譲マンションの新たなお得意様に なりつつある。

一方で、買い手の見つからない物件は思い切って損切りし、再販業者に買い取って もらう仕組みも水面下で出来上がっている。在庫を抱えたくない分譲マンション業者と、 格安で物件を取得できるリセール業者との利害が一致したわけだ。

分譲マンション業者にとっての2005年問題の影響がはっきりするのは各社の 決算期だろう。来年3月末時点で在庫をどの程度まで減らせるかが、運命の分かれ目と なりそうだ。

(個別企業名・マンション名等は日刊工業新聞より抜粋・その他内容の一部は日経新聞から抜粋記事引用、製作協力K様)



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