不動産基礎知識:契約成立前の信義則(08.04.14)

不動産取引では、売り出されている不動産に対して、 購入の意志と購入条件を表明する際、購入申込書(買付証明書)を売主に提出する。 この意思と条件を売主が検討し、受諾の可否と条件を回答する。 ケースは少ないが売渡承諾書を提出する場合がある。 この条件が折り合って、契約成立の運びとなる。

購入申込書の提出だけでは、一方からの意思表明のみであり、 相手方がまだ受諾し、契約成立の合意を得られていない。 合意に至っていない段階で、購入の意志の撤回をしても法的な責任は無い。 このことをもって、不動産や住宅の営業担当者が“キャンセルできますから”と 安易に扱ってしまうことになる。

一般的に、購入申込の意思表示をしてから、売主側からの回答が戻るまで、 早ければ即日か翌日、条件交渉が厳しい際でも、事情がない限り、 2~3日で回答が戻ってくる。

この回答が購入申込の条件と折り合っていない部分がある場合は、 まだ契約成立の合意がなされていないため、 この時点で購入申込を撤回しても責任は生じません。

売主側からの回答が届き、契約の条件が一致すると、 では契約しましょうと、契約成立の運びとなります。 契約締結後(契約書の取り交わし)は、契約書面の中に解約になった際の取り決めが いろいろなケースに分けて記載されていますので、それに従うだけです。

しかし、契約成立の合意後、契約締結までの間に、 契約成立に至らなくなってしまった場合は、どうなるのでしょうか。

不動産取引の場合、宅地建物取引業者(不動産会社)が、 買主に対して重要事項説明を契約締結前に行うことが義務付けられていることから、 この重要事項説明を受けて、その内容に当初の契約するための目的に 支障が出るような場合は、買主側から撤回しても、問題ないでしょう。

ただし、重要事項説明と全く違う理由で撤回した場合は分かりません。 また、重要事項説明は買主側に対してですので、 売主側からの撤回の理由にはならないとも思われます。

不動産取引の実務では、諸事情により、契約成立の合意後、契約成立前の撤回の場合、 道義上の責任は生じても(謝るだけ)、法律的・金銭的な責任は生じずに終わることが多い。

この諸事情が撤回された相手方からみて、まぁそれなら仕方ないかなと思えるようなものなら、 相手方のご理解とご好意で、特段と大事にはならないのですが、 もし、相手方がそんなわがまま許せない、訴えてやると争いになってしまうと、 契約成立を信じて出費した実額程度(損害)は認められてしまうこともあります。

※契約することによって得られたであろう利益までは認められない。 契約成立を信じて出費した費用(信頼利益の損害賠償)が認められるかどうかも、 個々の具体的な事情により判断が異なります。具体的なご相談は弁護士さんへ。

これらのことから不動産取引の中で注意したいのは、購入・売却の意志が明確でないにも関わらず、 安易に購入の意思表示(購入申込書、買付証明書)をしないことです。

今回の法的・金銭的な責任や賠償請求は、当事者間でのケースでしたが、これと同様に、 契約成立を信じて、業務を行った不動産会社からの実額の賠償請求が認められるかは分かりません。 認められるかどうかは別としても、よほど悪質と思われる場合や不動産会社が面子に こだわって訴えてくることはあるかもしれません。 金銭的に考えれば、よほどのことがない限り、認められた賠償額<裁判費用となりそうなので、 手間や時間を考えても、訴えるとは思えませんが。

不動産の仲介は当事者ではない三者となりますが、建築請負の場合、 ハウスメーカーなどの建築会社は当事者になります。 建築請負契約では重要事項説明のような行為はありませんので、 契約条件合意後、契約成立までは、今回のケースが当てはまります。

建築会社に契約を信じさせ、いろいろな調査や手間をかけさせた場合に、契約を撤回すると、 やはり諸事情によっては、実額程度の損害賠償を認められるかもしれません。

時間や費用、手間のことに加え、今後の営業活動に支障がでないように評判を考えて、 訴えることはないだろうと読み切れればいいですが、 自分勝手に利用するだけ利用してということはやり過ぎないようにご注意を。 契約成立を信じこませて、やれ調査だなんだと出費させないように。

営業担当者が勝手に契約成立を信じたり、契約を願って行う行為は大丈夫です。 このあたりの関係って難しいですね。法律は、世間一般の常識で判断されることが多く、 ドラマじゃないですけど、弱いものの味方になります。 消費者は基本的には弱いものとして保護されていますが、権利の乱用をすると、 立場が逆転してしまうことも。人として接していれば大丈夫ですが、 相手は商売なんだからという姿勢だともしかしたらですね。



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